「子育て支援企業」ではなく「子育て企業」に 理念2:仕事と同じように、チームで子育てに取り組む組織づくり
理事長「子育てって、母親が一人で立派にしてきたものでしょう?企業がチームで子育てするなんて、聞いたこともない。非現実的すぎるよ」
企業の子育てに理念を作る 子育てフィロソフィ代表 心理学博士の山本ユキコです。
子育ては、本来チームで行うものです。母親一人で子育てをすることは、文化的にも、進化論的にも、生理的にも無理なことなのです。
児童虐待数が10万件突破し、25年連続で最多更新を繰り返していることは、この「母親一人が立派に子育てする」という考え方が行き詰っていることを間接的に示しているものでしょう。子育てを変えるには、今までのやり方をドラスティックに変える必要があります。
もともと、日本では子育ては地域や血縁のチームで行ってきました。しかし、現在地域や血縁の子育てチームは消滅しています。多くのNPOや政府の大家族や、地域社会ででの子育てを復活させる取り組みは、社会を変えるほど成功しているとはいいがたいところがあります。
ファミリーサポート
もちろん、成功している取り組みもあります。例えばファミリーサポートという行政が仲介する、子育ての有料ボランティアの登録システムです。このシステムは、地域の祖母世代が中心の子育て支援ネットワークで、子育て支援をしたい主に祖母世代などの方たちが、自治体の支援を受けた事務局に、ボランティア登録します。そして、同じく登録をしている子どもの母親が、仕事復帰などで突発的な子どもの世話をする手が必要な時に、そのボランティアさんに、子どもの世話をお願いをする仕組みです。私も、このシステムは一人目の子どもが2歳のころまでよく使用し、保育園の預かりがないときに、とても重宝しました。
しかし現実的には、祖父母の手が借りられない、働く母親のギリギリの部分を支えるセーフティネットであり、すべての母親が利用しているほどは普及しておらず、全体を変えるほどのものでは、残念ながらありません。
全体を変えるためには企業の力が必要
子育てのチームをすべての母親にいきわたらせ、母親が、出産を経て育児中でも無理なく仕事に復帰できるために一つの突破口は、企業が社員の子育てに乗り出すことです。
具体的には、ファミリーサポートに準じた取り組みを、産休前の母親向けに企業内で行い、産休前に社員同士で子育てを助け合うグループを作るのです。そのグループで子育てに関する理念や事例や約束事項を共有する研修も行い、安心してお互いが子どもを預け、預かることができる仕組みを作っておくのです。
すでに、ファミリーサポートという全国に広がる公的な組織があることから、企業向けに少しアレンジをしてシステムを取り入れればいいので、そこまで無理なこととは思えません。
子育て支援企業なんて、子育てを他人事にする言葉ではなくて子育て企業として、社員の子育てを企業の責任であるとまで思ってほしいのです。