山本ユキコの子育てフィロソフィ

子育てを会社でシェアしよう。子育ての体系的な知識と知見を会社でシェアして、働きやすい企業文化を育成

意外と九州にも子育てに優しい企業がありました#1:株式会社ドーワテクノス

子育ては、チームで行うもの。子育てフィロソフィ代表 山本ユキコです。

“社員の子育ても企業の責任である”と、意識改革を。企業から子育てへの理解と知識を広げていく活動を始めています。

 

それと同時に、九州の実際の企業の現状のインタビューを九州の派遣会社九州スタッフさんと一緒に始めました。

 

九州はまだ“遅れている”?

私が「企業から、子育ての知識と価値観を発信する活動を始めたい」と相談すると、多くの人が口をそろえて「九州ではまだ無理だ。東京に行った方がいい」と言われます。

私が父親向けの子育て本を出すときに「九州の書店では、父親向けの育児書の売り上げがほかの地域にくらべて売れない」といわれたり。

九州のトップの進学校の一つでは「女は勉強せんでいいやろ」と教諭に言われる、驚くような文化が、少なくとも最近まであったり。

本当に、九州はそんなに男女共同参画、企業の子育て支援、後進地域なのでしょうか?

まずは現状を見るために、九州で子育て支援に理解のある、実際の企業の取り組みや考えをききとりを始めました。

 

結論から言うと行った先は、女性が子育てしながら働きやすい職場でした

初回はご縁のあった、北九州の商社へ伺いました。結論から言うと、女性が子育てしながら働きやすい職場でした。

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一緒にインタビューに行った九州スタッフの方が「育休の時、周りに分かってもらえるための根回しなど何をされましたか?」と質問をしたときに「え?根回し?」と、女性社員さんは質問の意図が分からなかったのです。

多分根回しなど必要ない、子育て中の女性社員にやさしい風土が根付いているのだろうと思えました。

社長が社員を大切にする人格者。その流れをくむ、古き良き中小企業。

残業などの古き企業文化は残っているのですが、改善への取り組みの意欲を見せてくれました。これから、どのようにさらに進化していくのか楽しみです。また、伺ってお話しを聞きたい、株式会社ドーワテクノスさんです。

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株式会社ドーワテクノス

www.dhowa-technos.co.jp

 

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代表取締役 小野裕和 三代目社長さんです。今回、インタビューを快諾いただきました。ありがとうございます。

 


御社の仕事について教えてください

『ものづくり業界に特化した専門商社』です。
モノづくりをしている企業の要望にお応えして、様々な電気・機械製品を納めています。ただ単に右から左に製品を納める物売りだけではなくて、お客さまの成長と業績アップのためのアイデアを提供する、提案型のコンサルティング営業を目指しています。

 

人材活用について、働く環境面で工夫されている事はありますか

当社は経営理念やクレド(社員の行動指針)に「社員幸福の追求」を明文化し、社内浸透を図っております。創業以来、「社員満足なくして顧客満足なし」の考えで経営の舵を取ってきましたが、今後ますます多様化、複雑化する雇用問題に対応するため、「社員ファースト」の考え方で「働き方改革」に取り組む必要性を強く感じています。しかし実情は、まだまだ有給消化率の低さや残業過多の文化などこれから取り組まなくてはいけない課題も山積している状況です。

 

具体的にどのような取り組みをされているのかお聞かせください

(1)改善活動
全国の事業所で10年ほど前からスタッフ社員(女性社員)を中心とした改善活動に力を入れており、業務効率アップ、コスト削減、営業サポート業務の強化などの素晴らしいアイデア(改善提案)が出され、会社利益にしっかり貢献しています。年に一度、改善活動発表会と称して、全国の事業所から代表者(ほぼ女性社員)を集め、その事業所で行った自慢の改善テーマを発表しあう会を開催していますが、年々レベルアップしている内容に感心させられます。この取組のお蔭で社内のコミュニケーションが活性化し、良い企業文化形成に繋がってきています。

(2)準社員を正社員雇用へ切り替え
一昔前は営業アシスタントという職種の方は、準社員という契約社員のような雇用形態でしたが、社内で改善活動の取り組みを始めたときと同時期に、正社員に待遇替えを行いました。当時の準社員の方々は、正社員と同じ、もしくはそれ以上に素晴らしい改善提案をどんどん出してくれましたし、上司から言われた仕事をこなすだけでなく、自ら考え、会社に貢献しようという強い意志を持っていましたので、待遇改善は当然のことだと思います。

(3)夏期特別休暇制度
前述したとおり社員の有給消化率が低いため、その対策として夏期特別休暇制度を作り、6~11月の間に3日間の休暇を取得すること(お盆休みとは別)を強制しました。上司が率先して夏期休暇を取ることを推奨することにより休みやすい職場作りを実施したところ、近年ではほぼ100%に近い取得率になりました。

 

有休の消化は何割くらいですか

確認してみて愕然としました。3パーセントです。
今後の経営課題として真摯に受け止め、経営幹部とともに早急に対策を考えたいと思います。

 

残業はどのようになっていますか

以前に比べると若い社員の方は割り切って早く帰る人も多くなってきましたが、まだまだ残業過多の風土があることは、否定できません。24時間稼働の工場がお客様にも多いので、休日や夜中に対応することもあります。きちんと代休をとれるようにすることや、効率的に仕事を処理して時短を推奨していく風土づくりが今後の課題です。

 

女性の割合と平均勤務年数はどのくらいですか

全社員164名中 40名が女性です。女性の方が勤続年数は長いです。
平均勤続年数 女性15.4年・男性12.6年

 

育休の取得は男・女ともにどのようになっていますか

法整備がはじまった1995年頃から育児・介護休業を就業規則に取り入れました。しばらくは対象者がいなかったのですが外国籍の社員が育休をまず取ってくれて、今までに5人が計6回取得しています。みんな女性です。今のところ男性社員からの希望は出ていませんが、育メンパパが出てきても対応できる会社にしたいと思います。

 

育休あけに、どのような職種に戻るのでしょうか

基本的には、元の職場に戻ります。二人目の育休職員は職種的に在宅勤務が可能でしたので、育休後は在宅で働いてもらっていました。社員全員の顔が分かる規模の会社ですので、対象者の事情を考慮しながら柔軟に対応しています。

 

育休後、時短勤務や在宅勤務などは可能ですか

時短は可能です。現在時短中の女性社員は16時に退社します。
別の社員は育休後、在宅勤務が可能な職種でしたので、在宅で働いてもらっていました。すべての職種で在宅ができるわけではないのですが、事情を考慮しできることは配慮しています。

 

転勤はどのようになっていますか

国内に19カ所の事業所があり、またロシア・タイにも現地法人がありますので、総合職の採用時には転勤は絶対条件にしています。しかし昨年入社した新入社員は0歳の子どもがいたので1年間は転勤させず地元での勤務にしました。介護や育児で家庭の事情がある社員にはできるだけ配慮します。大企業とは違い、社員皆さんやご家族の方々の顔が浮かぶところが中小企業の良さだと思っています。

 

採用において、どんな人物像が求められますか。

中小企業は大企業の下請けではなく、オリジナリティが出せなければ厳しい時代になっています。この時代を乗り切るためにトップダウンの経営ではなくて、各事業部門が自立したチームの集合体としての連邦経営を目指していますので、自らの仕事をデザインできるクリエイティブな人材を男女問わずに求めています。

 

採用において、どんなスキルが求められますか

電気や機械の知識・経験がある技術者。男女年齢の制限なく、理系的なスキル・センスを持っていて、仕事のデザインができる人を求めています。当社は技術商社ですが、営業だけでなく、SE(システムエンジニア)も大歓迎します。

 

子育て中の社員の声

Aさん(1歳7か月の子どもの母)

子どもが11ヶ月児のときに保育園に入れ、仕事復帰しました。以前、別の社員がすでに育休を取っていたので取りやすく助かりました。復帰後の業務負担についても産休に入る前から上司、同僚と打ち合わせしていたので特に問題はなかったです。子どもが3歳になるまで育児短時間勤務(時短)が可能ですので、現在は時短を利用して午後4時に帰宅しています。

時短を使うことで他の社員に迷惑をかけることの無いよう、業務を勤務内で終わらせるように心掛けています。

夫が育児にとても協力的なことや自宅近くに両親が住んでいることもあり、子どもが熱など突発的な事態も対応できるので、私は環境に恵まれていると感じています。どうしても休まなければならないときも上司、同僚の理解があるので助かっています。

子どもがいることや時短を利用していることで遠慮することはなく、とても協力的な職場で育児と両立しながら働いています。

 

聞き取りの印象

先代の社長さんが社員をよく把握し、人間的な経営を心掛けてきた風土がしっかりと根付いているところが伺えました。そして、3代目の社長さんもその良い風土をクレドなどとして明文化して継承されています。

子育て中の女性社員さんが、子育て中も気がねなく、しっかりと仕事ができる風土と仕組みが自然と回っていました。育児・介護中の無理な転勤を控えることも含めて、中小企業の家族的な経営を生かした利点と思います。

有休の問題も、まずは夏期特別休暇をとることから一歩ずつの試行錯誤がされています。残業しやすい雰囲気はあるもの、若手に押し付けることはないとのことで、そう言う意味での働きやすさもあるようです。

また、育休取得率を公開していいのか確認したところOKいただき、社長さんから「正直経営(がモットー)です」と言われたのが印象に残りました。受け入れづらいことも隠さず課題として受け入れる社長さんの雰囲気で、社内の風通しもいいのではないのかと思えました。